白い恋の結晶~キミへと続く足あと~


ハルは、俯き続けるあたしの隣で、ふと桜の木を見上げた。


あたしもつられて見上げる。


ふわり、ふわり。


風に吹かれて、ピンク色の花びらが舞い落ちる。


木の枝の隙間から朝日がキラキラと差し込み、手を顔の前にかざした。


長い長い冬を乗り越え、ようやく満開を迎えた桜の木。


住宅街から学校までは一車線の狭い道が続いていて、両端には田んぼしかない田舎道。


木造の屋根のついた小さな小屋のようなバス停の隣に、この木は立っている。


道路の方には伸びきれない根っこは田んぼの方に伸びていて、少し傾いている。


その田んぼの主人が町役場にこの木の伐採を頼んでいるようで、何回か職員の人が木を見にきていたことがある。


だけど、絶対に切らせないんだから。


あたしの思い出の木だ。


あたしと……柊(シュウ)の……。


「うおっ!! やっべ!! マジで遅刻だ篠原!!」


「え?」


ズボンのポケットからスマホを出して時間を見たハルが、ひとりで慌てて走り出し、あたしを置いて行く。




< 4 / 297 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop