白い恋の結晶~キミへと続く足あと~
ハルは、俯き続けるあたしの隣で、ふと桜の木を見上げた。
あたしもつられて見上げる。
ふわり、ふわり。
風に吹かれて、ピンク色の花びらが舞い落ちる。
木の枝の隙間から朝日がキラキラと差し込み、手を顔の前にかざした。
長い長い冬を乗り越え、ようやく満開を迎えた桜の木。
住宅街から学校までは一車線の狭い道が続いていて、両端には田んぼしかない田舎道。
木造の屋根のついた小さな小屋のようなバス停の隣に、この木は立っている。
道路の方には伸びきれない根っこは田んぼの方に伸びていて、少し傾いている。
その田んぼの主人が町役場にこの木の伐採を頼んでいるようで、何回か職員の人が木を見にきていたことがある。
だけど、絶対に切らせないんだから。
あたしの思い出の木だ。
あたしと……柊(シュウ)の……。
「うおっ!! やっべ!! マジで遅刻だ篠原!!」
「え?」
ズボンのポケットからスマホを出して時間を見たハルが、ひとりで慌てて走り出し、あたしを置いて行く。