ごめんね、

はっと我にかえると少年はもういなかった。

代わりに龍が心配そうに私をまじまじと見つめていた。

「お前、大丈夫か?」

「………」

私が何も言わないでいると気を使ってか、

龍が話を振ってきた。

「...てかお前、かっこいーじゃん!

なんか、どっかのヒーローみたいだった!

まじ凄かった!」

龍にとっては誉め言葉なのかもしれない。

それが本心なのか、なんてどうでも良かった。

私の中ではもう、

龍の口から出たそれは、

私の機嫌をとるための、

ただのお世辞だということが

すでに決まってしまっていたから。

< 40 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop