ごめんね、
はっと我にかえると少年はもういなかった。
代わりに龍が心配そうに私をまじまじと見つめていた。
「お前、大丈夫か?」
「………」
私が何も言わないでいると気を使ってか、
龍が話を振ってきた。
「...てかお前、かっこいーじゃん!
なんか、どっかのヒーローみたいだった!
まじ凄かった!」
龍にとっては誉め言葉なのかもしれない。
それが本心なのか、なんてどうでも良かった。
私の中ではもう、
龍の口から出たそれは、
私の機嫌をとるための、
ただのお世辞だということが
すでに決まってしまっていたから。