だいち、







「さむっ...」



夏といえど、夜は肌寒い。

上着持ってこようかな。...いや、いいか。すぐそこだし。


追い出されたと同時に渡された小銭を握り、近くのスーパーへ向かう。




ふと空を見上げると、うっすらと見えたお月様。

そういえば、今日は満月じゃなかったっけ。


ポカンと浮かぶ月を見つめながらぼーっと歩いていると、微かに温もりのある何かにぶつかってしまった。




「いだっ、すみません...」



謝りながら前を見ると、思わず目を見開いて言葉を詰まらせた。









「久しぶり、あほ理沙」



憎まれ口を叩きながら、にこっと笑う。










夏が、来た。





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