だいち、










「────大地...」


「もー、ちゃんと前見て歩けよなあ。ぶつかったのが俺じゃなくて、ヤンキーとかだったらどうすんだよ」


「......えっと、お、おかえり」


「会話噛み合ってねーな。とりあえずただいま」


「...え、と...」




どうしてだろう、心は落ち着いているのに、言葉が出てこない。

あれ?あたし、大地といつも何話してて、どんな口調だったっけ。



「なにびっくりしてんだよ」


「...急に現れるから...」


「急にじゃねーよ。ぶつかる前から理沙のこと呼んでたよ」


「え?」


「もー、大丈夫か?夏だから耳悪くなってんじゃねーの?」


「ごめん、ぼーっとしてた」


「はいはい。なに?これから買い物?」


「ああ、うん。醤油と味噌買ってこいって...」


「そっか。じゃあ俺も行くー」


「は?」


「荷物おいてくるから、そこの公園で待っとけな」


「え、ちょ...」





あたしの返事も聞かず、大地はスタスタと歩いて行ってしまった。




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