だいち、
だいち、
「大丈夫ですか!?あ、い、今、救急車っ...」
車から降りてきた人が、青ざめた顔をしながら震える手で電話をかけている。
虫の声が、うるさい。
人の声が、うるさい。
心臓の音がうるさい。
額を流れる冷や汗が邪魔くさい。
目にかかる前髪が邪魔くさい。
大地にまとわりつく血が、邪魔くさい。
「大地っ...ね、目、あけてよ...っ、大地!!」
「......っ...せー、な......聞こえて、んだよ...」
「!」
大地が、小さな声で返事を返した。
そして、微かに目が開いた。
「大地!良かった...良かった...」
「...理沙、大丈夫...か?」
「あたしのことなんかどうでもいい...っ、大地、もう少ししたら、救急車が来るからっ、それまで......それまで、頑張って...っ」
「...泣いてんじゃ...ねーよ...っう...」