キミのいない世界
「…ひっ」


思わず、小さな悲鳴を漏らした。


玲音が、あたしのことを『姉ちゃん』じゃなくて『鈴』って呼んだのも気になった。けど、


今は、一刻も早くこの場を離れたい。


これ以上、見られたくない。


周りの目が、怖い。


その思いで、一杯だった。


「どうした、姉ちゃん?」


呼び方は、もう元に戻っていた。


「…離して」


あたしは玲音にお願いする。


「え……」


「離しなさいって言ってるでしょ!!」


一瞬、その場の空気が凍った気がした。


玲音が動揺した隙に、腕の中から逃げた。


「…行こう、祐くん」


「あ…あぁ」


祐くんは、玲音を睨んでから、あたしのあとを追ってきた。


< 21 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop