最悪から最愛へ
まだ半分寝ている状態の峻は、抱きしめている渚を困らせたいと思った。


「いやだ。このままがいい。まだ眠いんだから、起こすなよ」


「え?」


離れようなんて思わないから、渚をより引き寄せた。予想もしない動きに渚は焦る。渚の顔は、峻の胸に密着する。峻の胸から聞こえてくる音は安定していたが、渚の鼓動は早くなっている。


「店長…離してくださいよ。困ります」


動揺していること、意識していることを気付かれたくない。


「いいから。お前ももう少し寝ろよ。まだ時間は早い」


外は明るくなってきているが、まだ5時である。

しかし、一度目覚めてしまったから、なかなか眠れない。峻は渚の頭を撫でる。


「店長、無理です。眠くないです。だから…」


どうしても離れてもらいたい。
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