最悪から最愛へ
渚は、もぞもぞと動く。だけど、離れる様子が全然ない。峻は渚を気持ちの良い抱き枕に感じた。瞼が下りてくる。


「紺野。あと二時間でいいから、寝かせて」


峻は抱きしめている手を緩める。だから、逃げようと思えば逃げれたのに…渚は逃げなかった。峻の胸の中は、思いの外、温かくて心地よい。峻のTシャツを軽く握って、渚もまた眠りについた。


「紺野、起きろよ。俺、出るから送っていくよ」


「んー今、何時ですか?」


「もう9時だ」


2時間の予定が倍の4時間も寝てしまった。峻は、30分前に目が覚めて、シャワーを浴びていた。

峻は10時から出勤の予定だ。


「え?もうそんな時間?」


「だから、そろそろ行かないと遅刻してしまう。お前は休みだから、いいけどな。ああ、そうだ。帰らないで、このままここで寝ていてもいいぞ」


「はい?」
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