最悪から最愛へ
「店長もそろそろ結婚して、お嫁さんにお弁当を作ってもらえばいいんですよ。健康管理もしてもらえますよ」


「ハハッ、そうだな。でも、残念ながら予定がないんだよなー。相手もいないし」


峻は、カップラーメンにお湯を注いで蓋を閉めた。


「うちのお店にも独身の子が何人もいますよ。どんな子が好みですか?」


佐和子の言い方は、女性を指名出来る夜の店での接客のようだ。


「好みねー、常識があって、優しい人がいいかな」


「意外に普通の好みなんですね」


峻は出来上がったラーメンの蓋を開けて、割り箸を割る。


「意外って、なんだよ。まあ、そんなにこだわりはないんだけどね」


着替えを終えた渚が、更衣室から出てくる。休憩室を通らないと帰れないので、気が重い。佐和子が渚を見て、目を輝かせる。


「そうそう、紺野チーフなんてちょうど良い年頃じゃないですか?どうです?」


佐和子は、渚の意思を確認もしないで、勝手に勧める。

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