最悪から最愛へ
近い距離の意味
水曜日はラックスストアの特売日。この日限りの特売品を狙って来る客が多い。

〈お一人様一点限り〉

特売品は、多くの客に買ってもらうため、一点限りと限定することが多い。そうすると夫婦できたり。子供を連れてきたりするので、客数が増える。


平日の昼間は、年配の夫婦、3歳以下の子供を連れた若い母親が多い。


「ぼくが押すよ」


子供用の小さいショップカートを張り切って押す3歳くらいの男の子がいた。


「いらっしゃいませー」


「ママー、メロン買おうよ」


「えー?メロン?」


小田がメロンをちょうど箱から出して並べていた。

男の子は、メロンの前で鼻を動かす。甘い香りが漂ってきたのだろう。

今日の特売品ではないメロンだ。だから、母親が困惑する。


「メロン食べたいよー」


男の子は、目を輝かせておねだりする。


「んー、でもね…」
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