最悪から最愛へ
「そうだ!紺野!」


峻は出て行った渚を急いで追い掛ける。


「あら、あら?店長ったら、もしや?うふふ…とうとうかしら?」


峻が渚の魅力にでも、気付いて追い掛けて行ったと勘違いする佐和子は、嬉しそうに微笑む。まるで、ドラマの展開を楽しむかのようだ。


「うわっ!何ですか?」


追い掛けて来た峻に腕を掴まれた渚は、目を丸くした。


「忘れるとこだった」


「はい?何を?」


何か仕事の用なのか?追いかけて伝えなければならないほど、大事な用なのか?

渚は用件が思い浮かばないから、キョトンと首を傾げる。


「覚えておけと言っただろ?」


「あー。…覚えてないです。すいません、用がないなら、失礼します」


「待て」


「いい加減にその手を離してくれませんか?セクハラで訴えますよ」


自分の腕を掴む峻の手を嫌悪感たっぷりの顔で見る。

< 13 / 236 >

この作品をシェア

pagetop