最悪から最愛へ
「あ、悪い。じゃなくて!お前、上司に対して、言葉遣いが悪いぞ」


「え?ちゃんと敬語使ってますよ」


「フンのことだよ」


フンと言われて、思わずウサギのフンを思い浮かべた渚は笑いそうになる。口元が緩んだ渚を峻は見逃さなかった。こめかみをピクッと動かしたが、渚はそんな峻に気付いていない。


「紺野…お前さ、全然反省してないだろ?」


「いえいえ、反省してますよ。大変申し訳ありませんでした」


こんな男に頭を下げたくはないけど、いつまでもここにいたくない。自分が謝ることで、この場を逃れられるなら、頭を下げよう…渚は、一応素直に謝ったつもりだ。

しかし、峻はそんな渚を良いと思わない。


「ほんと…かわいくないヤツだな」


「店長にかわいいなんて思われたくないですから。では、失礼します」


渚は、裏にある社員通用口から外に出る。峻は、休憩室に戻った。少し残っていたラーメンが柔らかくなってしまったのが、残念だ。
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