最悪から最愛へ
チュッ


峻は触れるだけの軽いキスをした。軽いキスでは、気持ち良さが味わえない。渚は、すぐに離れた峻の唇を見る。


「何?物足りない?もっと欲しい?」


「い、いえ。もういいです。帰りましょう」


心を見透かすように意地悪く微笑む峻に、渚は恥ずかしくなって、慌てて否定する。自分がせがんでしまったことも冷静に考えれば、恥ずかしいことだ。


「続きは部屋で」


峻は、受け入れの意志を渚から感じた。キスを受け入れたことは、その先もオーケーという意味に捉えた。自分の家の方向へ車を走らせる。


「ま、待ってください。行くなんて、言ってないです」


「だって、さっきのキスだけじゃ物足りないだろ?俺も足りないしさ」


「でも、私、そういうつもりはなくて…」


「は?じゃあ、どういう意味でもう1回なんて、言ったんだよ?」
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