最悪から最愛へ
焦る渚に峻は、溜め息をつきたい気分だ。キスをせがんでおいて、その先は嫌だとか何がしたいのか分からない。


「あれは、間違いです。間違えて出てしまった一言なので…」


本心ではない。だって嫌いな人なのに…。


「間違いじゃない。体が素直に反応しただけだよ。気持ちを偽ると苦しくなるぞ」


「気持ち?…店長にはどんな気持ちがあるんですか?」


どんな気持ちから抱きたいという結論に至った?峻の気持ちを知りたくなった。

峻は、車をスーバーの駐車場に止めた。ちゃんと向き合って、話をする必要がある。お互いが通じ合わないと先に進めないからだ。


「俺の気持ちが知りたいってことか?」


渚は頷く。そして、峻の方へ顔を向けて見つめる。睨み合うことは何度もあったが、見つめ合うことはほとんどない二人だ。

どちらにも以前のような憎しみの目はない。


「好きだよ。渚が好きだから抱きたい」
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