最悪から最愛へ
理解出来ていないように見える渚に、峻は言葉を続ける。


「お前は本当に俺が嫌いか?本当に嫌いならもっと全力で拒むはずじゃないか?それに、嫌いだったら、わざわざ出てこないだろ?」


「え…だって、来いって言うから…」


「誰が誘っても行くのか?」


誰が誘っても?


「それに、キスは今回が初めてじゃない。だから、受け入れたんじゃないのか?前のことも含めて」


受け入れた?


「つまり、渚にもその気が少しはあるってことだよ」


その気がある?

渚は、峻が言う言葉を心の中で反復する。だけど、混乱は続く。峻の言葉を素直に受け入れることが出来ない。


「考える時間をもらえませんか?」


すぐに答えを出せなかった。嫌いだと思っていた人を本当は好きだなんて認めることが出来ない。


「分かった。今日は諦めて送るよ」


車を再び走らせた。
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