最悪から最愛へ
田中くんがなぜ渚を誘うのかは謎だ。年下の田中くんは渚から見ても謎の多い男である。明るくて元気がいいのは良いところだが、軽い印象もある。

真面目か、不真面目か、どちらとも判断しにくい。


「何で飲みに?」


すぐに賛成できなかった。


「疲れているみたいだから、気晴らしに?行きましょうよ。俺、今夜暇なんですよ」


田中くんの彼女は家族旅行に行ってしまい、暇な夜だという。


「えー?今夜といっても、もう深夜になるよ。帰って寝ようよ」


23時に閉店だから、夜といってもあまり時間がない。疲れてるように見えるなら、早く休ませて欲しいものだと渚は思う。


「なにいってるんですか?夜は長いんですよ。まだまだ時間はたっぷりありますって」


「そうかなー」


「そうですよ。行きましょう」


「おい、田仲」


田中くんの背後から峻が顔を出した。
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