最悪から最愛へ
田中くんの背後から峻が顔を出した。


「うわっ、店長。びっくりさせないでくださいよー。あ、店長も一緒に行きませんか?チーフと飲みに行こうと話していたんですよ」


「そういう話は客に見られる場所でするな。特に紺野。チーフは注意する立場じゃないのか?」


峻の言っていることに間違いはない。夜遅い時間になると客の数が減る。だからと言って、客に一番見られる場所であるレジで仕事以外の話はするものではない。


「申し訳ありません」


渚は、素直に反省した。田中くんも隣で頭を下げる。


「しっかり仕事しろよ。あ、俺も参加な」


「はい。分かりました!」


峻は注意しながらも飲みに行くことには承諾した。


「チーフ。3人で決定ですね。出入り口を見てきます」


「え…行くって言ってないのに…」


言うだけ言って、田中くんは出入り口の整理に行ってしまった。

< 150 / 236 >

この作品をシェア

pagetop