最悪から最愛へ
「お疲れさまでした!」


「お疲れ」


乾杯の音頭は田中くんだった。渚は流されるまま連れてこられたので、気分が盛り上がらない。何も言わないで、ビールの入ったジョッキを合わせただけ。


「あー!仕事の後のビールは最高っすね。つまみ、何にしましょう?俺、唐揚げ食べたいので、頼みますね~。あとサラダも要りますよねー」


妙に盛り上がっているのは田中くんだけだ。峻は淡々としながらも、早々とジョッキを空けた。


「お!店長、早いっすね。お代わり頼みますよ」


それに、この場を仕切ってるは田中くんだ。ずる休みをするという不真面目さの名誉挽回だろうか。気遣いも冴えている。


「意外に気配りが出来るんだな?わりとマメな性格か?」


「マメな男の方がモテるんですよ。それと優しい男ですね。だから、俺は基本優しい男ですからねー」


自分を優しいと言うなんて、田中くんらしい。

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