最悪から最愛へ
勝手な解釈をする田中くんに峻は憎しみを感じ、睨む。


「嫌ってるかどうかは田中が判断することではない」


「えー、でも、チーフに断られているなら諦めた方がいいですよ。次の女を探すとか」


余計なお世話である。田中くんが口出すことではない。


「諦めるつもりはないよ」


「意外にしぶといんですね。じゃあ、チーフに聞いてみましょうよ。チーフは店長と俺のどちらかを選べと言われたら、どっちにします?」


「え?どちらかを?」


渚は、二人の顔を見比べる。ニコニコと楽しそうな田中くんと苛立ちが顔に出ている峻がいる。

嫌な汗が流れ、喉が乾いてきた渚は、ビールのジョッキを空ける。二人は渚の答えを待っていた。


「あ、どちらも選ばないは無しですよ。絶対選んでくださいね」


先に釘を刺されてしまい、返す言葉に詰まる。


「早く決めろ」


低い声を出す峻がせかす。渚は、決めた答えを言うために深呼吸をする。
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