最悪から最愛へ
その場しのぎで選んだだけであって、特別な意味はない。

渚も早々と帰りたい気分だった。しかし、峻は簡単にチャンスを逃さない。


ギュッ


向かい側にある渚の手を両手で覆うように握りしめる。そして、渚を見つめる目は真剣というよりも必死だ。

焦っているつもりはないけど、早く自分のものにしてしまいたい。他の男に横から奪われるなんて最悪な事態は避けたい。

予想外の田中くんの言動に、峻は余裕を無くし始めていた。


「渚…。ちゃんと渚が考えてくれるまで待つつもりだった。でも、はあ…」


今、ここで強引に迫っても良い方向に行く保証はない。峻は渚を見つめながら、言う言葉を選ぶ。


「他の男に取られたくないんだよ。俺、かなり好きなんだけど…どうしてくれるんだよ」


「はい?どうしてって…」


告白されて、責められるなんて…何が言いたいのか分からない。


「今すぐ俺のものになれよ」
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