最悪から最愛へ
田中くんに言われなくても峻も分かっている。でも、峻はゆっくり攻めていこうと思っている。

ただのんびり待っていても何も変わらないのは、この10日間で実証されている。渚との距離が全然変わらないからだ。


「田中くん、久しぶりだね。テスト、どうだった?」


「チーフ、俺のテストを聞いている場合じゃないですよ。店長とどうなってるんですか?」


「ちょっと、ここでする話じゃないでしょ…」


客が少ない夜ではあるけれど、レジでする話ではない。万が一、客に聞かれたらクレームになりかねない。


「ま、店長が攻めるらしいからがんばってくださいね。…いらっしゃいませー」


「え?」


自分からする話ではないと注意したけれど、田中くんの言葉が気になった。

攻める?何を?どういうこと?何をするつもり?何をされる?


渚の頭の中は疑問だらけだ。




< 161 / 236 >

この作品をシェア

pagetop