最悪から最愛へ
「紺野、終わったら少し残って。確認したいことがあるから」


「はい。分かりました…」


事務室でパソコンを操作していた渚に峻は声を掛ける。

仕事の話をするつもりではない。確認したいことなんてない、仕事の話なら渚が断ることはしないだろう。もちろん、峻が確認したいことは仕事のことではない。


少々ずるい手口でも渚との時間が欲しかった。二人きりにならなければ、落ち着いて話が出来ない。進展もしない。

職場で二人きりになるのは危険な感じもするが、場所を選んでいる場合ではない。


「お先に失礼します」

「お疲れ様でしたー」


ラストまでいた従業員が次々に帰っていく。渚は、峻に呼ばれるまでパソコンでシフト表を作成していた。


「紺野。こっち来て」


「はい」

事務所にある4人用の小さなテーブルで、ノートを広げた峻が渚以外に誰もいないのを確認して、渚を呼んだ。


「そっちじゃない。こっちに座れ」


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