最悪から最愛へ
「もう10日も待っているんだけど、その考えの途中経過くらい教えてくれない?俺にとって、良い方向なのか?」


峻は渚に体を近付ける。


「多分…良い方向だと思いますけど」


「けど、なに?」


「いえ、何も…」


けどの後に続く言葉は迷いの言葉だったから、敢えて言う必要はないと、渚は思った。


「じゃあ、もう少し待つよ。紺野、立って」


「はい?えっ…あの、」


先に立ち上がった峻に引っ張られて立ち上がった渚は、突然抱き締められた。


ギュッ…


「て、店長」


「渚、腕を俺の背中に回して」


「え?はい?」


渚は指示通りに両方の腕で峻の背中に触る。密着度が高まる。


「その手、力を入れて…」


「は、はい…」


なぜ言われるままに動かなければいけない…そんなこととを心の隅で思ったけど、言われるまま動いてしまう。

お互いの体温が伝わる。

< 164 / 236 >

この作品をシェア

pagetop