最悪から最愛へ
「まずいな」


「え?」


「なんで素直に言う通りにしているんだよ」


渚の頭上から、少し切ない声が聞こえる。自分の言う通りに動く渚に峻は嬉しくなるが、もっとそれ以上を求めたくなり、抑えきれなくなりそうだ。

良い答えが出ることをほのめかす渚に期待してしまうから、求める気持ちが止まらなくなる。


「渚、こっちを見て」


この密着したままの状態で峻を見るなんて…されることが容易に想像できた渚は動かなかった。


「顔、上げて」


峻は諦めない。動かそうとする。


「い、嫌です…」


「この状態で嫌とか意味分かんないな。渚、キスしよう。好きだろ?」


好きだろ?…何が?峻が?キスが?

はっきりとキスの2文字を言われて、渚はますます動けなくなる。


「俺とのキス、好きだろ?この前、もっとって、言ったよな?」


「もっとじゃなくて、もう一回って…あ!…」
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