最悪から最愛へ
素直な姿勢
本当に忘れた頃にやって来る。


「紺野さん、また久し振りになっちゃったよ。なかなか来れなくてごめんね」


待ってなんていないのに、謝れても困るだけだ。空気の読めない小太りの山口という客が、久し振りに来店した。

存在を忘れかけていたのに。


「でもさ、何で連絡くれないの?ずっと待っていたんだよ。忙しかったのかな?俺も忙しかったけど、紺野さんのためなら、時間作るのに。」


よく喋る男である。


「ねえ、今日は何時に終わるの?待っていてあげるよ」


待っていて欲しいなんて、頼んでもいない。図々しい。


「あの、お客様。困ります」


「困った顔の紺野さんもなかなかいいね」


困っているからといって、簡単に引き下がらない。

こういう時はどうすれば…


渚は辺りを見回した。峻がいるはずだが、姿が見えない。空いている時間帯なので、休憩に入ってる従業員が多い。




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