最悪から最愛へ
「紺野、何があった?報告して」


報告という名目であっても、山口が話さないなら、渚から聞き出すしかない。しかし、渚は山口を恐れていて、安易に口が開かなかった。


「紺野さんもプライベートのことは話したくないんだよ。たかが店長なんかにね」


峻を挑発するかのように山口は笑う。客の挑発にのって、揉め事を起こしたくはない。峻は気持ちを落ち着かせるために渚を見る。

渚の目は怯えている。落ち着くどころか胸はざわめく。

渚を苦しめるヤツはもはや客ではない。許さない。


「お前みたいな客にたかが呼ばわりされたくないね。いったい何様のつもり?紺野に何をするつもりだよ?」


「は?おい、客に向かってその口の聞き方はないだろ?いいのか?本部にクレーム入れるぞ」


敬語を使わずお前呼びわりする峻に一瞬たじろいだが、ここで逃げるわけにはいかない。切り札にもなるクレームを持ち出すことで、上位に立とうとする。
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