最悪から最愛へ
ここでの話を聞いているだけでは、山口よりも峻のほうが妄想の激しい危険な男に思える。

それでも、峻は真剣なのである。本気の妄想だ。


「妄想?確かに妄想かもしれないな。渚と結婚して、子供は二人くらいで、笑顔溢れる幸せな家庭を築くのを夢見ているし。俺はお前よりもずっと渚を想っているから、気持ちは負けない」


「へー。じゃあ、頑張れば?しっかり頑張りなよ。で、幸せにしてあげなよ」


「ええ?山口さん、諦めていいんですか?」


山口は、あっさりと諦めて帰ろうとする。それを見た他の3人が唖然とするのも当然である。

渚への気持ちはそんな薄いものだったのか?


「ああ、どうしても渚ちゃんが欲しいわけじゃない。かわいいから、ちょっと気になっただけだし」


それほど本気ではなかったようだ。本気なら忙しくてももっと頻繁にラックスストアに通うだろう。


山口の手をひらひらさせる姿は似合わないが、未練なく帰っていった。
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