最悪から最愛へ
渚は、やっぱり来なければよかったと後悔した。休みの日に絶対会いたくない人物が現れたことで、露骨に嫌な顔をする。


「店長、お疲れさまです」


それでも、挨拶を忘れないのは社会人10年で身に付いたそれなりの常識からだ。


「紺野。そんなに俺の顔が見たくないなら、わざわざ来るなよ」


峻は、真っ直ぐ自分を見ようとしない渚に苦笑する。


「なに、どうしたの?渚、何かミスでもしたの?」


江梨子は、様子のおかしい2人を見て、渚が仕事上で失敗したのかと心配する。渚は、お腹をさすりながらも心配してくれる江梨子の言葉に慌てる。


「江梨子、違うよ。何もしてないし、別に店長に会いたくなかったわけでもないよ」


身重の江梨子を心配させてはいけない。今この場だけでも仲良くは出来ないけど、せめて普通にしようと、渚なりに努力する。

少し…かなりかな…無理しているけど。
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