最悪から最愛へ
「すいません。今日は、予定がありますので」


「あら?峻、彼女出来たの?」


春佳は勘が良い。特に女に関しては鋭い。


「ああ、彼女が夕飯作って待っているんだ」


「まあ、そんな彼女がいるの?ねえ、紹介してよ?私も連れていって」


図々しい女である。かつて恋人だった男が今どんな女と付き合っているのか、自分よりも美人なのかと気になることはよくあることだが、会おうとするのは気の強い春佳ならではだ。


「いや、ダメだ。清水マネージャーも帰ったほうがいいですよ」


渚の待っている家に元彼女なんて連れていけない。渚とのこれからを邪魔されたくないし、渚に誤解されたくない。


「分かったわ。今日は仕方ないから諦めるけど、今度は付き合ってね」


春佳はあっさりと帰っていったが、今度が怖いと峻は思った。


「店長。清水マネージャー、気を付けたほうがいいですよ」
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