最悪から最愛へ
「じゃ、ゆっくり買い物してください。紺野、重い物は持ってやれよ」


江梨子には、営業スマイルを見せ、渚には厳しい顔を見せる。こんな風に使い分けが出来るのも接客業ならではである。


「そんなこと言われなくても分かっているのに」


峻の後ろ姿にあっかんべーをしたい気分になるが、グッと我慢する。誰が見ているか分からない店内、渚を知る客もいるはず。客として買い物していても油断できない。


「渚って、店長さんと仲悪かった?」


「んー、いいとは言えないよ」


この場ではっきり断定出来ない渚は、曖昧な答えを告げる。


「ふーん。店長さん、爽やかイケメンなのにねー。興味を持たないの?」


「爽やか?あの人が?興味を持つなんて、有り得ないわ」


「うん。爽やかで人気があるんだよ」


「人気?どこの誰に?」


渚は、初めて聞く爽やかと人気という言葉が信じられなかった。
< 20 / 236 >

この作品をシェア

pagetop