最悪から最愛へ
帰っていく峻の後ろ姿を見送って、スマホを操作する。誰か呼べる男を探す。峻にこだわってはいないけど、一人で居酒屋にいるのは寂しい。呼べば来る男はいる。食事を一緒にする男に不自由していない。



峻は、家のドアを開けようとして、ドアノブに手をかけたが、動きを止める。


「カレーか」


カレーの良い香りが外にまでしていた。食欲をそそる香りに峻は、鼻を動かす。


「ただいまー」


「え?もう?」


早めに切り上げると言われたが、あまりにも早かったからびっくりする。またカレーは出来上がっていなかったから余計に焦る。




「おかえりなさい。ごめんね、まだご飯出来てないの」


「ん?大丈夫。待っているよ、良い匂いがするね」


もし、峻が帰ってこなかったら保存できるカレーを作ったのだ、保存する必要がなくなったのは嬉しいことだ。


「清水マネージャーとは食べなかったの?」



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