最悪から最愛へ
渚に限って、離婚なんて考えるはずがないと思うけど、断定できる自信もなかった。血の気が引いていく思いだ。もし、式で揉めたことを理由に離婚を言い渡されたら…後悔してからでは遅い。


「だけど、俺にタキシード似合うと思うか?学芸会かなんかの王子様みたいな格好、おかしくないかよ?」


まだタキシードは王子様が着るものだと言う。簡単に自分の意見は曲げない。


「クスッ。そんなことないわよ。峻は、背が高いから似合うと思うよ。うちの旦那だって、それなりに似合っていたでしょ?」


望も教会式だった。峻は、望の結婚式を思い出す。望のウェディングドレス姿は思い出せるが、隣に立つ新郎の姿はシルエットでしか思い出せない。

男は引き立て役。そんな言葉がぴったりだ。


「そうか。主役は花嫁だよな…」


「そうそう、そんなに峻の格好を周りは気にしないわよ。褒められるのは花嫁さんなんだから」
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