最悪から最愛へ
お互いが歩み寄らなければ解決は難しい。良い方法は見つからないかもしれないけど、もう一度話し合う必要はある。


「ただいまー」


「おかえり」


「あれ?だれか来たの?」


テーブルの上に包装紙に包まれた菓子箱があった。望が持ってきたバームクーヘンである。


「ああ、姉貴が来たよ。それ、渚にだって」


「わあ!嬉しーい。お礼を言わなくちゃ」


バームクーヘンは渚の好物である。望は実の弟よりも渚を可愛がっている。弟よりも妹が欲しかったとよく言っていただけに、二人の結婚を一番喜んでいた。

渚は早速お礼の電話をかける。


「ありがとうございます!え?…ああ、そうなんです。え?…いや、まあ…そうですよね。分かりました。…はーい。また」


「姉貴、なんて?」


「うわっ。何で後ろにいるのよ?」


突然後ろから話し掛けられて、至近距離にいた峻に驚く。峻は、後ろから渚を抱き締める。

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