最悪から最愛へ
***

青空が広がる4月吉日。


「いやあ、これはかなり緊張するなー。転ばないように気を付けないといけないな」


「クスッ。お父さんったら、大丈夫よ」


教会のドアの前で渚は父親と腕を組み、並んで開く時を待った。ガチガチに緊張している父親に対して、渚は落ち着いている。

中でドアが開くのを待つ峻も緊張していた。何度も深呼吸をしている。


「腹は大丈夫か?」


「うん」


ほんの少し膨んでいるお腹に手を当てる。結婚式は渚の妊娠が分かり、予定より3ヶ月早くなった。


「では、開けますね。ゆっくりとお進みください」


式場のスタッフの合図と共にドアが開かれ、参列者の視線が一気に渚と父親に来た。父親の緊張はクライマックスに達する。


「行くぞ」


気合いの掛け声が必要らしい。渚はそんな父親に微笑んで、一歩を踏み出す。

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