最悪から最愛へ
「渚をこれからもよろしく」


「はい」


父親は峻に頭を下げて、役目を終えたことにほっとして自分の席に座る。ここからは本日の主役である二人で進む。


「行くぞ」


父親と同じ掛け声を言う峻に渚は吹き出しそうになった。

普段は堂々としている峻がこれほどまで緊張するとは、意外だった。緊張する峻は見たことがなくて、新しい発見だ。

結婚してから半年経ったけど、きっとまだ知らない顔がある。お腹の子が生まれたら、また初めて見る顔があるかな…想像するだけで楽しくなるし、幸せな気分になる。どんな子が産まれてくるだろうか。

大事な式の最中に渚は先のことを考えていた。


目の前の神父さんの言葉に集中しなくては…渚は身を引き締めるように姿勢を少し正す。

隣から「誓います」の声が聞こえてきて、次が自分の番だと知る。

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