最悪から最愛へ
愛嬌があると言われて、喜ぶ男はそういないだろう。佐藤も例外ではない。


「まあまあ、佐藤くん。頼りにしているからね。これから頑張ってね!」


渚は、肩を叩いて励ました。


「はい!頑張ります!」


頼りにされると張り切る。やる気が湧いてくる。佐藤は、単純な男だ。


「ところで、チーフ」


今度は反対に佐藤が渚の肩を叩く。


「ん?なあに?」


「彼氏とかいます?」


「いないよ。残念なことに」


残念だと言う渚は、なぜか笑顔だ。残念そうには見えない。


「じゃあ、俺、立候補します!」


佐藤は宣言するように片手を挙げた。


「あらー。紺野チーフ、良かったじゃないですか?」


「え?いや、あの…」


突然立候補されて、渚は動揺する。全然タイプではない佐藤だけど、言われて悪い気はしない。少しドキドキしていた。


「佐藤。紺野なんかやめた方がいい」


「なんでですか?店長」
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