最悪から最愛へ
そこにいる全員が2人の張り合う声に、何事かと成り行きを注目し始めた。睨み合う2人は注目されていることに気付いていない。

呆れた佐和子が仲介に入る。


「もう!店長もチーフもやめてくださいよ。空気が悪くなります。本当に仲が悪いんだか、良いんだか…」


「「良くない!」」


仲の良くない割には見事なハモリだ。


「フン…」


渚は、峻に背中を向けて、並々と入っているビールを一気に飲み干す。


「佐藤くん、入れて」


空になったグラスにもっと入れろと要求する。酔いたい気分になってしまった。


「紺野チーフ、飲み過ぎは良くないですよ」


「いいから!飲みたい気分なの!」


自分の見たことのない渚に、恐る恐る注ぐ佐藤である。


「フッ。佐藤、紺野の本性が見えてきただろ?」


「いや、あの…でも、僕はチーフが…」


どう気持ちの整理をしていいか分からない佐藤は、うまく答えられなかった。
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