最悪から最愛へ
峻はそんな渚の後をつい追ってしまう。


「ちょっと!何で付いて来るんですか?」


追ってくる峻の気配を感じて、ぴたりと足を止めて、振り返る。渚が止まると峻も止まった。


「何でそんなに機嫌が悪いんだ?」


「は?店長のせいですよ。ひねくれ者の私のことなんて、気にしないでください。早く戻った方がいいですよ」


いい加減にトイレに行かせて欲しい。大した用もないのに、引き留めないで欲しい。渚は、トイレと反対方向を指差す。


「何でお前に指図されなくちゃいけないの?」


そう簡単に言うことを聞かない峻を渚は面倒な男だと思った。


「じゃあ、そこに座っていてください。もし、私が戻らなかったら、具合が悪いと思ってくれていいですから」


渚の指は、トイレ前にある椅子に向けられた。

峻は渋々とそこに座って、言われた通りに待つことにする。
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