最悪から最愛へ
トイレを出たら、峻がいると思うとドアが重く感じてしまう。渚はゆっくりと開けた。


「うわっ!…何で目の前にいるんですか?」


「遅いから、見に行こうかと思ったところだ」


そんなに時間は経っていないはずだ。酔っている峻の時間感覚は、正確ではないのだろう。待ちきれなくなったのだ。


「大丈夫ですから、戻りましょう」


峻と2人だけでいたくないから、渚は足早に先を歩く。早く戻りたい。


「待てよ」


後ろから付いて来る峻に腕を引っ張られる。


「はあ…今度は何ですか?店長…」


スムーズに戻らせてくれないことに溜め息が出て、苛立つ。何で何度も邪魔をするのか…。


「来いよ」


グイッ


「ちょ、ちょっと!」


酔っているくせに力は強い。渚を簡単に自分の胸まで持ってきた。突然の動きに困惑する渚は、ジタバタと腕を動かして離れようとする。




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