最悪から最愛へ

「ふーん。帰らないの？やっぱり送ろうか？」


「いいえ！１人で帰ります！」


渚は、怒りながら出て行く。

玄関のドアが閉まった瞬間…


「プッ！アハハ。やっぱりアイツ、おもしろいな」


峻は渚の怒る姿を見るのが、楽しみなようだ。




「おはようございます…」


「あれ？紺野チーフ、珍しくテンション低いですね。今日、店長は休みですよ？」


店長である峻の休みの日は、渚が普段以上に元気であることを知っているアルバイトが首を傾げる。


「本当だな。紺野、具合でも悪いのか？」


小田まで渚の様子がおかしいと言い出す。


「ううん！元気だよ。今日、店長休みだったよね？忘れたー。やった！あの店長がいないなんて、ラッキー」


無理やり作った笑顔に気付く小田とアルバイトは、顔を見合わせるが何も言わない。言ってはいけないような空気だったからだ。