最悪から最愛へ
渚は、惣菜コーナーで買ってきた弁当を電子レンジで温めて、食べ始めた。峻の休憩時間はあと15分。まだ少し時間はあるけど、居心地の良くない空間から出ようとする。


「今日は夕市で忙しくなるだろうから、しっかり休んでおけよ」


「えっ?」


峻の言葉に渚はなぜか驚く。


「ん?なんだ?」


別におかしなことを言ったつもりのない峻は訝しげに、渚を見る。


「いえ、あの…」


「なんだよ?」


言葉を濁す渚に苛立つ。渚は珍しく優しい言葉をかけてきた峻に驚いたのだが、睨むように見てくるから、優しく見えたのは幻だと思うことにした。


「いえ、やっぱり何でもないです。戻らないんですか?」


「はあ?何が言いたいんだよ。今、戻るよ」


言いかけた言葉は言わない…早く戻れと追い出す…生意気な女だと心の中で呟いて、店内に戻った。
< 64 / 236 >

この作品をシェア

pagetop