最悪から最愛へ
やっと離れてくれた客に渚は、肩の力を抜く。ことの成り行きを見ていた数人の客も離れていく。


「紺野、一通り片付いたら事務室に来いよ」


「はい、ありがとうございました」


峻と渚だけがその場に残ったけど、峻が先に離れていった。渚はボーッとしながら、そんなに乱れていないカートの整理する。

それから、一つ一つのレジ動作を確認して、事務室へ行く。なんとなく足取りは重い。


「おー、紺野。大変だったみたいだな。お疲れさん」


事務室にあるパソコンで、在庫管理をしていた小田は先に戻った峻から話を聞いていた。峻は事務室の奥にある店長室にいる。

トントン


「はい」


「紺野です」


「どうぞ」


「失礼します」


パソコンを見ていた峻は、渚に椅子ごと体を向ける。


「お疲れ。さっきの客さ、今までも誘われたことあるの?」
< 77 / 236 >

この作品をシェア

pagetop