最悪から最愛へ
実際、女のチーフということで、面倒くさそうにして、蔑んだ目で見る客が少なくはない。


「いや、女というだけでなくて、お前がかわいいからだろう」


「はい?あの…私、もういい年ですし、かわいい部類には入らないと思うんですけど」


渚は自分の身の程を知っているつもりだ。それに、峻からかわいいと言われて、その言葉を素直に受け取れない。お世辞を言う人ではないけど、お世辞だと思ってしまう。


「まあ、外見に騙されているんだろうけどな。だから、かわいい笑顔を見せられて勘違いするヤツも出てくるわけだ。少しきをつけたほうがいい」


「でも、笑顔で接することは、接客業として大切なことですし」


「うん。大切なことだ」


笑顔は大切。でも、その笑顔のせいで特別だと勘違いされては困る。では、どうしたらいいのか。

渚は何の解決策も浮かばず、途方に暮れる。


「とりあえず、怪しげな客にはほどほどにするんだな」




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