最悪から最愛へ
「ああ、紺野チーフは電話が入っていますので、私が変わります。チーフ、早く出た方がいいですよ」


「あ、うん。田中くん、よろしくね。すみません、失礼いたします」


渚は、田中くんの機転に感謝して、この場を離れようと山口に背中を向ける。


「紺野さん。メール、待ってるからね」


ビクッ


まだ諦めない山口に声をかけられて、渚はまたしても怯えたが、振り向きも返事もしないで、事務室へと足を進める。


「お客様。紺野チーフを誘うのは、やめてください」


「は?」


「大変ご迷惑をしていますので」


「君には関係ないだろ?」


山口は田中くんを睨む。田中くんも負けていない。客ということを忘れたかのように、睨み返す。


「関係あります。大事なチーフですから」


田中くんは、真っ直ぐ山口を見て、きっぱりと言い切る。小太りの山口よりも田中くんの方がずっとイケメンだ。


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