最悪から最愛へ
「おい!待て!本当に覚えておけよ!」


電話は呆気なく、素早く切られたというのに…相手のいない電話に怒る峻は、少し虚しく見える。



ラックスストアは、朝7時から夜11時まで営業している。社員の業務時間は、交代制で、早番と遅番に分かれる。

今日、早番だった渚は、遅番の一週間前に配属になったばかりの副チーフの佐藤康志に引き継ぎをして、帰る準備をする。佐藤は渚より5つ下で、この店で初めて副チーフになったので、どんな仕事でも張り切っておこなっている。


「じゃ、佐藤くん。あとは、よろしくね」


「はい!任せてください!」


とてつもなく大きな声で返事をする。


「店長、お疲れ様です」


「ああ」


その時、峻が本部から戻ってきて、事務室のドアが開かれる。


「お先に失礼します」


入れ替わりに渚は事務室を出た。
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