うつくしいもの
けっせいとひきぬき

私が高校を卒業する少し前、

寺岡さん自らが私の家に訪れた




「――大事なお嬢様を、
ぜひとも、私に預からせて下さい」


家のリビングで、
ソファーに座りながらとはいえ、

寺岡さんは私の両親に頭を下げていた



私の両親も寺岡さんの事は勿論知っていて、

お願いをしている寺岡さんよりも


うちの両親の方が、
恐縮していた




私がまだ未成年だからか、
寺岡さんは私が音楽の世界に進む事に対して、

両親に了承を得ていた




寺岡さんが有名なプロデューサーだから、
と言う事ではなくても、

きっと私の両親は特に反対はしなかったと思う




私に興味なんて、ないから
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