うつくしいもの

「別に否定しなくていいよ。
反対はしないから。

俺、今日も気を使ったんだよ?
もし、電話の時菜々花の側に優雅が居たらあれかな?と思って。
だからワンバウンド入れてホテルで食事って誘って、
後からまた電話して、
こうやって部屋に呼んで」



「――違う。

寺岡さん、もし最初からホテルの部屋に誘ってたら、
私が来ないかもしれないって思っていたんでしょ?」



「まぁ、それもあるけどね。

菜々花、それを分かってて、この部屋に来たの?」


その手は、私のブラウスのボタンを、

1つ、1つ、外して行く



寺岡さんの指は、
器用に動いている




その指、その手で、

たくさんの素晴らしい音楽を生み出して来たのかと思うと、

その曲の全てが汚らわしく思えて来る



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