うつくしいもの

主にプロモーションは、
ラジオでの告知の仕事が多いけど、雑誌の取材や、

深夜だけど歌番組にも出た


その歌番組はテレビ局でお客さんを入れずに収録だったけど、

とても緊張した




「あ、ごめんなさい…」

緊張からか、
何回も歌詞を間違えた



私が間違える度に、
ディレクターからストップが掛かり、

演奏が、止まる




「自分で書いた歌詞なのに、
間違い過ぎだし」


准一はそう言うが、
特に私を怒ってはいない事が、
その口調で分かる




「まさか、ゴーストライターが書いてる?!」


仁志も、そうやって笑わせてくれる



「な、わけないでしょ!
それならば、誰かの二番煎じみたいなこんな綺麗事の歌詞じゃなくて、
もっと素敵な歌詞になってるから」





優雅はそんな私達の会話を聞いて、

クスクスと笑っている




私は大きく息を吐き出し、
気合いを入れる



「何度もごめんなさい!!
もう一回、お願いします。
次は絶対に間違えません!」


撮影のスタッフ達にそう言い、
頭を下げた





いつか、生放送とかで沢山の人前で歌う日が来るのか……



今から不安だな……





そのテレビ収録が終わる頃、

様子を見る為に寺岡さんがスタジオの中にやって来た



テレビ局の人達が順々に寺岡さんに頭を下げている姿を見ていると、

やはりこの人は凄いのだと改めて思った






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