うつくしいもの
「なんの事?
俺が作ったんだよ、あの曲は」
優雅は涼雅の手を振り払う
楽屋がシーンと静まっていて、
みんな彼らの方を見ていた
あの曲の事を知らない人達も、
段々と状況が分かって来ているのだと思う
「なぁ、お前。
あれは俺が作った曲だよな!
あの晩、聴かせただろ?」
涼雅は私の方を見ると、
こちらに歩いて来る
その顔や目が切羽詰まっていて
「――知らない」
怖くて、そう言って後ずさってしまう
その瞬間
涼雅は諦めたように、
私から目を逸らした