うつくしいもの

「――ねぇ、菜々花はあの曲の事知ってたんだね?」


静かな部屋で、
優雅の声はとてもよく通った




「――うん。

1度、涼雅に聴かせて貰った。
サビだけだけど……」



どんな状況でそれを聴かせて貰ったのかは、
口にしたくないけど



きっと言わなくても分かるだろう




「菜々花、本当に兄貴に1回遊ばれただけなの?」



「えっ?なに、その質問?」



ふと、視線が合うと、

問い詰めるようなその優雅の目が怖くて、

視線を逸らしてしまう




それに、なんでそんな事を改めて訊いてくるのか分からない




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